全てのゴジラを過去にするゴジラ『GODZILLA 怪獣惑星』

強烈なゴジラ映画が誕生した。もはやゴジラ映画とは呼べないような、峻烈さを備えた異様な作品が生まれてしまった。

『ゴジラ』を破壊する『ゴジラ』

史上初のアニメ映画。それだけでも十分に衝撃的な出来事なのだが、完成された作品はより衝撃的な仕上がりになっていた。

2016年『シン・ゴジラ』が往来のゴジラを超越しつつ、だがどこか往来のゴジラらしさを踏襲しゴジラ映画に新たな可能性を与え日本中が衝撃を受けた。
しかし、『シン・ゴジラ』の成功は可能性と同時にゴジラに決定的な終止符を打ちかねない可能性も示してしまった。

これまでの怪獣映画は一般層には訴求し辛いジャンルであった。
だがシン・ゴジラは圧倒的なリアリズムと情報量により一般層にまで影響が波及。かつて一時代を築いた平成シリーズを超える観客動員と興行収入を記録した。それどころか16年度の日本映画興行収入第1位にすら上り詰めてしまったのだ。

シン・ゴジラはゴジラ史に残る記録を打ち立てた。それは同時にゴジラに新たな呪縛を生むことになるのではと思わずにはいられない。
ゴジラを一新した『シン・ゴジラ』の成功は観客にゴジラの認識を改めさせることになる。かつてのゴジラ映画が1954年『ゴジラ』に囚われ比較されてきた。ゴジラはこうあるべきだという声も存在した。
そんな混沌ともいえるシリーズにゴジラの概念を破壊する『シン・ゴジラ』が現れ、そして成功した。

今後のゴジラは『シン・ゴジラ』と比較されることになる。新たな層を取り込んだがゆえに観客もゴジラとなれば『シン・ゴジラ』のような作品を期待してしまうのも無理はないだろう。

だが『怪獣惑星』はゴジラをまたしてもぶっ壊してしまった。
『シン・ゴジラ』は最初から存在していない、それどころか過去の作品が存在して田舎のように、これまでにないゴジラを見せつけてきた。

往来のゴジラの出自、設定といった「こうあるべき要素」を全て投げ捨てた。あまりにも激しくゴジラを作り変えてしまった。
『怪獣惑星』はこれまでは禁忌とも言われたラインにまで踏み込んでいる。
もはやこれはゴジラなのか？と疑問に思えるほどにゴジラの全てを破壊しつくした。だが、ゴジラそのものの脅威、絶大さはしっかりと継承されている。

『シン・ゴジラ』によりゴジラシリーズが作りにくくなる未来を『怪獣惑星』が消し去った。
あまりにも強烈。ゴジラを徹底的に破壊する『ゴジラ』が登場した。

ゴジラに新たな可能性を生み出したアニメゴジラ第一章。

ゴジラの歴史が大きく動いている。