恐怖に対峙する冒険活劇『IT "それ"が見えたら、終わり。』

IT イット“それ


ピエロを恐怖の象徴へと変貌させた『IT』が映画になった。
この映画を観ると確実にピエロが怖くなる。だけどなぜか涙を誘う、そんな怖くも胸が暖かくなる作品に仕上がっていた。

ネタバレがあります。

少年少女の冒険活劇

街を脅かすピエロの悪霊ペニーワイズ。子どもたちをさらい街を恐怖のどん底へと叩き落す…。そんな勝てそうにない存在へと立ち向かう7人の少年少女を描いた物語だ。

本作はホラー描写も秀逸だ。(ただ音で驚かせるという演出の多用が見られるのは少し残念な点だ)
ホラー映画として心理的嫌悪、恐怖感を十分すぎるほどに刺激しつつも、少年少女の冒険活劇的な作品として仕上げている。

学校では負け組(ルーザーズ)な彼らはルーザーズクラブを結成。少年少女は親の過度な束縛、虐待やいじめなど様々な問題を抱えていていじめっ子に狙われながらもピエロが起こした事件の核心へと近づく…。

事件を調査し核心へ近づいていく様はまさに冒険活劇といえる様相だ。
彼らは傷つき挫けながらもピエロの恐怖から街を解放しようと奮闘する。
どれほどの恐怖を体験しようとも、時には仲たがいを起こそうとも諦めない。ピエロに打ち勝つため、彼らの団結力は強まってゆく…。

街を出たり山を超えたり海を渡ることはない。壮大さは無いが冒険感をひしひしを感じさせる。ジュブナイルホラーと呼べる仕上がりだ。

恐怖に打ち勝つ大切さを描く

ピエロは恐怖を具現化する。抱えたトラウマや畏怖の対象などを具現化し襲い掛かる…。

暴力をふるう親の姿、失踪した弟の姿となり襲い掛かってくる。
自身の内側に絡みついて取れることがない恐怖をピエロは真似る。少年少女はピエロと対峙していくことで自ずと自分が抱えた恐怖へと対峙していく構造になっているのだ。

最後はピエロを完膚なきまでの圧倒的な暴力で叩きのめしていく…。
恐怖に打ち勝つためには圧倒的な力が必要だと言うことなのだろう。それをこの作品では暴力として描いているように思える。

自分とは何なのか、恐怖とは何か…。
恐怖から解放され自立していくこと、そして仲間と団結する美しさと大切さを盛り込んでいる。

単純なホラーではない。恋愛もあり冒険もあり、そして道徳的な一面を持つ…。ホラーなのにどこか文学的な雰囲気を持つ異色作。
ジュブナイルホラー『IT』は日本の高校生にヒットしている理由も頷ける。

若いうちに見てほしい作品だ。