今だからこそ第一期『ハガレン』アニメを見よう

太陽に挑む者

傑作漫画『鋼の錬金術師』 実写版も公開予定ですが、予告公開時点で賛否が巻き起こっています。 ハガレンの映像化といえば2003年版のアニメも忘れてはいけません。
こちらも賛否を巻き起こした作品です。

2003年にアニメ化された作品は第一期や旧鋼などと呼ばれています。今回はその第一期を改めてレビューしていきます。

原作とは全く異なる物語


アニメ化された2003年は原作のストックがたまっておらず、尚且つ1年間の放送だったために当然原作を追い越してしまいます。

原作に追いついたアニメでよくあるのがオリストことオリジナルストーリー。第一期も例に漏れることなく独自展開がなされています。それはそれは、もはや原作なんてあってないようなほどの改変っぷりですよ。

人体錬成の失敗で失った体を取り戻すために賢者の石を探し求めるという本筋はそのままに、序盤から原作をなぞりつつも時系列や設定、キャラの心理性格の変更が大胆に行われています。

原作では全員登場していなかったホムンクルスも数名がオリジナルキャラとして登場。そもそもホムンクルスの設定そのものが大改変されているのですが…。

原作の黒幕はお父様と呼ばれる中年男性でしたが、こちらでは何百年と生き延びてきた女性になっており、賢者の石を作る目的も自分が生き続けるためになっています。

原作よりも陰惨で流血やホラーチックな描写も多くこれを土曜の夕方六時に良く放送で来たなと思うほど。

序盤から原作を良くも悪くも無視した物語が展開され、中盤以降はほぼ完全なオリジナルになっています。

真理の門(原作では真理の扉と呼ばれていました)の向こう側には私たちの住む現実世界が存在しており、エドは最終的にその世界に飛ばされてしまう…。という終わり方。

原作の要素を生かしつつも独自の物語展開は中々上手いことまとまっています。ダークな作風は原作以上なので、こちらの方が面白く感じる人も多いかもしれません。

しかし、エドも原作よりも喜怒哀楽が激しく精神的な幼さを見せています。原作ではなかった殺人を犯してしまう描写もあり、少しばかり別人のような存在になっています。
アルも同じでブラコン的な印象を受けるほど。
主役キャラクターも大胆に改変してしまうのも第一期アニメの魅力と言えるのですが、過度な描写も見られるのでさすがにやりすぎなのではと思うことがあります。

なのに、面白い。
原作の名前とキャラクターを使用しただけのほぼオリジナル作品になっているのですが、胸糞が悪くなるような陰惨さは見事です。夕方アニメであろうが暗くおもっ苦しい、抗議が来てもおかしくない作風を貫き物語をまとめ上げた手腕には拍手したくなります。やはり面白い作品ですが原作とは分けて鑑賞する必要がありますね。

史実と巧みに絡み合う劇場版、そして完結


テレビシリーズの続編及び完結編として劇場版『シャンバラを征く者』があります。

エドが現実世界に飛ばされドイツで元の世界に戻るためロケット工学を研究すし錬金術世界ではアルが兄に再び会うため旅を続けています。

物語は第二次大戦前であり、トゥーレ教会など現実に存在した団体や人物、事件が絡んできます。
テレビシリーズよりもダークさが増し、ファンタジーの枠を飛び越えSFのような印象を与えるほどの大胆不敵な物語展開が行われます。

もう一つの世界が存在するというワクワク感がたまりません。エドとアルは再会できるのか、物語はどのように収束していくのか…。

正直に言うと劇場版の完結は後味が悪いとも感じました。しかし、エドとアルの物語を完結させるにはこの方法しかなかったでしょう。非常にもどかしさを感じる終わり方ですが、とてつもない力で完結を納得させられてしまいます。

あまりにも面白い。史実とフィクションが完全なほどの一つの物語として絡まり一本の糸となって観客を縛り上げハガレン世界の奥深さへと引き込んでいきます。

テレビシリーズから物語も何もかもが続いているので一本の映画として見ることは非常に困難です。
ですが、テレビシリーズを見ていれば納得するしかない完結を提示してくれます。

今だからこそ見てほしい


第一期アニメはその大胆な改変から賛否を巻き起こしました。実写版が賛否を巻き起こしている今だからこそ見てほしい作品です。

これを見るとハガレンの解釈が変わり実写版の見方も変わるかもしれません。
実写版公開前に第一期をもう一度。